ズワイガニの味噌汁は、家庭で楽しむカニ料理の中でも格別な味わいがあります。
しかし、下処理を正しく行わないと、期待した風味が出ないことも少なくありません。
そもそも、ズワイガニと紅ズワイガニとオオズワイガニの違いを正確にご存知でしょうか。
これらのカニは近縁種ですが、味わいや価格が異なり、それぞれ紅ズワイガニの味噌汁やオオズワイガニの味噌汁としても楽しめます。
また、小さいズワイガニの味噌汁は出汁が出やすいためおすすめです。
この記事では、美味しいズワイガニの味噌汁レシピや、ズワイガニ味噌汁の作り方のコツを徹底紹介します。
特に悩みがちな、カニの味噌汁が生臭くなるのはなぜ?という疑問にもお答えし、具体的な臭みを取る方法も紹介します。
ズワイガニの解凍方法から、ズワイガニの食べてはいけないところ(エラなど)の見分け方、ズワイガニの味噌汁にかにみそは使うべきか、さらにカニの殻を味噌汁に使う出汁の取り方まで、下処理の全ステップを網羅します。
- ズワイガニの正しい解凍方法と下処理の手順
- 味噌汁が生臭くなる原因と簡単な臭み取りのコツ
- ズワイガニ・紅ズワイガニ・オオズワイガニの特徴の違い
- カニの殻を活用した濃厚な出汁の取り方と絶品レシピ
ズワイガニの味噌汁の下処理と基本

- ズワイガニの解凍方法の注意点
- ズワイガニの食べてはいけないところ
- ズワイガニと紅ズワイガニとオオズワイガニの違い
- 紅ズワイガニの味噌汁とオオズワイガニの味噌汁
- 小さいズワイガニの味噌汁の活用法
ズワイガニの解凍方法の注意点
冷凍ズワイガニを美味しく味噌汁にするための最初の関門は「解凍」です。
ここで失敗すると、旨味が流れ出てしまいます。
結論として、カニの解凍は「低温でゆっくり」または「短時間で一気に」が基本です。
急激な温度変化は、カニの細胞を壊し、ドリップと呼ばれる旨味成分を含んだ水分が流れ出る原因となります。
これがパサつきや風味の低下につながります。
ボイル冷凍(茹でガニ)の場合
ボイル済みのズワイガニは、冷蔵庫に移して半日~1日かけてゆっくり解凍します。
時間はかかりますが、ドリップの流出を最小限に抑え、旨味を身に留めることができます。
乾燥を防ぐため、新聞紙やキッチンペーパーで包んでからビニール袋に入れると良いでしょう。
生冷凍の場合
生のズワイガニは、解凍後に時間が経つと「黒変」という現象で身が黒ずむことがあります。
これは鮮度の問題ではなく酵素の働きによるものですが、見た目が悪くなるため、食べる直前に短時間で解凍するのがおすすめです。
具体的な方法としては、ビニール袋に入れて口をしっかり閉じ、流水または氷水に当てて解凍します。
直接水に触れると旨味が逃げるため、袋に入れるのがポイントです。
NGな解凍方法
以下の方法は、カニの風味を著しく損なうため避けてください。
- 電子レンジでの解凍:加熱ムラができ、一部だけ火が通ってしまいます。
- 常温での解凍:カニが傷みやすく、ドリップも大量に出てしまいます。
- 冷凍のまま調理:急激な加熱で身が固くなり、出汁も出にくくなります。
ポイント:
どちらの方法でも、「半解凍」の状態で調理を始めるのがベストです。
完全に解凍してしまうと、旨味がすべて流れ出てしまいます。
ズワイガニの食べてはいけないところ

ズワイガニを味噌汁に入れる際、下処理として必ず取り除かなければならない部分があります。
それは「ガニ」と呼ばれるエラと、「砂袋(胃袋)」です。
昔から「カニは食ってもガニ食うな」と言われるように、エラ(ガニ)は絶対に食べてはいけません。
エラは、カニが呼吸するためのフィルターの役割を持っており、海水中の雑菌や汚れが溜まりやすい部位です。
また、腐敗しやすく、食中毒の原因になる可能性があり、何より食べても美味しくありません。
エラは、甲羅を剥がした胴体の両側に位置する、灰色のビラビラとした部分です。
この部分は手で簡単に取り除くことができます。
もう一つは、甲羅側(カニ味噌の近く)にある「砂袋(胃袋)」です。
ここには消化しきれなかったエサや砂が残っていることがあるため、取り除いておくと雑味のないクリアな出汁になります。
これらの「エラ(ガニ)」と「砂袋」をしっかり取り除くことが、美味しいズワイガニの味噌汁を作るための重要な下処理ステップです。
ズワイガニと紅ズワイガニとオオズワイガニの違い

「ズワイガニ」と一言で言っても、実はいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
日本近海で主に流通しているのは「ホンズワイガニ」「ベニズワイガニ」「オオズワイガニ」の3種類です。
これらは同じズワイガニ属(Chionoecetes)ですが、生息水深や味、価格が大きく異なります。
違いを知ることで、予算や好みに合わせて味噌汁に使うカニを選ぶことができます。
| 特徴 | ホンズワイガニ (オピリオ種) | ベニズワイガニ (ジャポニクス種) | オオズワイガニ (バルダイ種) |
|---|---|---|---|
| 通称 | 松葉ガニ、越前ガニ、加能ガニなど | 香住ガニなど | バルダイ種 |
| 生息水深 | 200~400m | 500~2000m(より深い) | 100m前後(浅い) |
| 外見・特徴 | 高級ブランドガニ。身が詰まり、上品な甘みが非常に強い。 | 名前の通り、生きている時から全体が赤い。価格は安価。 | 大型になる。甲羅のトゲが大きくゴツゴツしている。 |
| 味わい | 味噌汁にすると濃厚で上品な出汁が出る。 | 身は水分が多いが甘みは強い。味噌汁にすると良い出汁が出る。 | 繊維がしっかり。タラバとズワイの中間のような身質とも言われる。 |
| 見分け方 | 口の部分がまっすぐ。 | 口の部分がまっすぐ。 | 口の部分がM字型になっているのが最大の特徴。 |
オオズワイガニをズワイガニとして販売することは食品表示法で禁止されています。
見分け方として、口が「M字」ならオオズワイガニ、まっすぐならホンズワイガニかベニズワイガニ、と覚えておくと便利です。
紅ズワイガニの味噌汁とオオズワイガニの味噌汁

前述の通り、ホンズワイガニは高級品ですが、紅ズワイガニやオオズワイガニは比較的安価に手に入ることがあります。
これらも味噌汁にすると、ホンズワイガニとは違った魅力があります。
紅ズワイガニの味噌汁
紅ズワイガニは、身に水分が多い(水っぽいと表現されることもあります)反面、非常に甘みが強いのが特徴です。
その水分のおかげで、味噌汁にするとカニの旨味と甘みが汁に溶け出しやすく、美味しい出汁が出ます。
スーパーなどで見かけることも多く、手軽にカニ汁を楽しみたい場合に最適です。
オオズワイガニの味噌汁
オオズワイガニは、近年北海道でも漁獲されるようになり、市場に出回るようになりました。
ホンズワイガニよりも安価な場合がありますが、しっかりとした身質で良い出汁が出ます。
カレイ漁の網を破る厄介者として扱われることもありますが、味は確かです。
どちらのカニも、ホンズワイガニと比べると安価ですが、味噌汁の「出汁」として楽しむには十分すぎるポテンシャルを持っています。
コストパフォーマンス良くカニの風味を味わいたい方におすすめです。
小さいズワイガニの味噌汁の活用法

ズワイガニはオスとメスで大きさが全く異なり、小さいサイズのカニ(主にメス)が出回ることがあります。
メスは「セイコガニ(勢子ガニ)」や「コウバコガニ」などと呼ばれ、オスに比べて非常に小さいです。
このような小さいカニは、身を取り出して食べるのは非常に手間がかかります。
そこで、丸ごと味噌汁にしてしまうのが最もおすすめの活用法です。
小さいカニは、身は少なくても、濃厚な「かにみそ」や「内子(うちこ:甲羅の中にある未成熟な卵)」「外子(そとこ:お腹に抱えた卵)」を持っています。
これらを丸ごと煮出すことで、身から出る出汁とは比較にならないほど濃厚で、複雑な旨味を持った出汁が取れます。
まさに、カニの旨味と栄養をすべて汁に溶け込ませて味わうための食べ方と言えるでしょう。
調理前にタワシなどでよく洗い、エラ(ガニ)だけはしっかり取り除いてから使用してください。
ズワイガニの味噌汁の下処理と作り方

- カニの味噌汁が生臭くなるのはなぜ?
- 生臭さを解決する臭みを取る方法
- ズワイガニの味噌汁レシピと作り方
- ズワイガニの味噌汁はかにみそも使う?
- カニの殻を味噌汁に使うだし汁の取り方
カニの味噌汁が生臭くなるのはなぜ?
せっかくのズワイガニの味噌汁が、生臭くなってしまった経験はありませんか。
その主な原因は、「トリメチルアミン」という成分と、「下処理不足」の2点にあります。
トリメチルアミンとは、カニや魚介類に含まれる旨味成分の一つが、鮮度の低下とともに細菌によって分解されて発生する物質です。
これが、いわゆる「生臭さ」の正体です。
もう一つの原因は、単純な下処理不足です。前述の「エラ(ガニ)」や「砂袋」が残っていると、そこに含まれる汚れや雑菌が煮出されてしまい、味噌汁全体の風味を損ねる雑味や臭みの原因となります。
つまり、生臭さを防ぐには「できるだけ新鮮なカニを使う」ことと、「食べる前の下処理を徹底する」ことが何よりも重要になります。
生臭さを解決する臭みを取る方法

もしカニに少し臭みを感じても、調理前のひと手間で大幅に軽減することが可能です。
生臭さの原因であるトリメチルアミンは水に溶けやすく、加熱で揮発しやすい性質を持っています。
1. 流水で洗い、冷水に浸す
まずはカニの表面をタワシなどでこすり洗いし、汚れをしっかり落とします。その後、ボウルに張った冷水に5分ほど浸します。
これにより、臭み成分が水に溶け出します。
ただし、長時間浸しすぎるとカニの旨味成分まで流れ出てしまうため、5分程度を目安にしてください。
2. 湯通し(霜降り)する
最も効果的な方法が「湯通し(霜降り)」です。沸騰したお湯にカニを入れ、表面が白くなる程度(生の冷凍カニなら3分、活けなら1分程度が目安)にさっと湯がきます。その後すぐに氷水に取り、粗熱を取ります。これにより、臭み成分が揮発し、残った汚れも固まります。
3. 酒や生姜を活用する
日本の料理で古くから行われている方法として、酒や生姜を使うのも有効です。
湯通しする際のお湯に酒や生姜のスライスを入れたり、味噌汁を煮込む段階で少量の酒や生姜を加えたりすることで、臭みを中和し、風味良く仕上げることができます。
これらの下処理を丁寧に行うことで、カニの旨味だけを引き出した、上品な味噌汁が作れますよ。
ズワイガニの味噌汁レシピと作り方

下処理が完了したら、いよいよ味噌汁を作ります。
ポイントは、カニの身だけでなく「殻」からも出汁を取ることです。
ここでは、カニの旨味を最大限に引き出す基本的なレシピを紹介します。
材料(2人前)
- ズワイガニ(下処理済み):2杯(小さいサイズの場合)
- 水:400cc~500cc
- (あれば)昆布:5cm角 1枚
- 長ネギ:1/2本
- 豆腐:1/2丁(150g)
- 味噌:大さじ2程度
- (あれば)酒:小さじ1
作り方
1. 鍋に水と昆布を入れ、30分ほど置きます。
その後、下処理したズワイガニ(丸ごとの場合はブツ切りにする)を入れ、中火にかけます。
2. 沸騰直前に昆布を取り出します。
沸騰してきたら弱火にし、アクを丁寧に取り除きながら、カニの出汁が出るまでじっくり10分ほど煮込みます。
3. カニの旨味が十分に出たら、斜め切りにした長ネギと、さいの目に切った豆腐を加えます。(ここで酒を入れると、さらに臭みが消え風味が良くなります)
4. ネギや豆腐に火が通ったら、一度火を止めます。
5. 味噌を溶かし入れます。味噌こしを使うとダマにならず、均一に溶けます。
6. 再び弱火にかけ、沸騰する直前(鍋肌がフツフツする程度)で火を止めて完成です。
美味しく作るコツ
味噌は、沸騰させると風味が飛んでしまいます。
必ず火を止めてから溶き入れ、温め直す際も煮立たせない「煮えばな」を意識するのが、美味しい味噌汁の最大のポイントです。
ズワイガニの味噌汁はかにみそも使う?

味噌汁に「かにみそ」を入れるかどうかは、好みが分かれるポイントです。
結論から言うと、濃厚なコクと風味を楽しみたいなら入れるべきです。
かにみそは、カニの「中腸腺」という部位で、人間でいう肝臓や膵臓にあたる器官です。
ここには旨味と栄養が凝縮されています。
味噌汁にかにみそを溶き入れると、カニの殻や身から出る出汁とはまた違った、特有の深いコクと濃厚な風味が加わります。
味噌との相性も抜群で、非常に贅沢な味わいに仕上がります。
ただし、かにみそ独特のほろ苦さや風味が、クリアなカニ出汁の邪魔に感じるといった側面もあります。
また、紅ズワイガニのかにみそは、水分が多く溶け出しやすいため、味噌汁にコクを加えるのにはあまり向いていないとされています。
かにみその使い方:
味噌を溶くタイミングで、かにみそもお玉の中で一緒に溶き、汁に加えてください。
まずは少量から試して、お好みの濃さを見つけるのがおすすめです。
カニの殻を味噌汁に使うだし汁の取り方

カニ鍋や焼きガニなどで身を食べた後、残った「殻」。
これを捨ててしまうのは、非常にもったいないです。
カニの殻には、身以上に旨味と香りの成分が詰まっており、これを使わない手はありません。
この殻を使って、最高のだし汁を取りましょう。
カニ殻だしの取り方
1. 食べ終わったカニの殻(脚の付け根や肩肉など、身が取りにくい部分も含む)を、軽く水洗いします。
2. トースター、魚焼きグリル、またはフライパンで、殻を軽く焼きます。(これは必須の工程です)
3. 殻に少し焦げ目がつき、甲殻類特有の香ばしい匂い(かっぱえびせんのような香り)が立ってきたらOKです。
この「焼く」工程で、カニの生臭さが飛び、香ばしさだけが凝縮されます。
4. 鍋に焼いた殻、水、昆布(あれば)、酒(少量)を入れ、中火にかけます。
5. 沸騰したら弱火にし、アクを丁寧に取り除きながら、15分から30分ほどじっくりと煮込みます。
6. 火を止め、ザルやキッチンペーパーで殻を濾せば、「黄金のカニ出汁」の完成です。
この出汁は、味噌汁に使うのはもちろん、雑炊、ラーメン、茶碗蒸し、パスタソースなど、あらゆる料理のベースとして使えます。冷凍保存も可能ですよ。
ズワイガニの味噌汁の下処理まとめ
最後に、美味しいズワイガニの味噌汁を作るための下処理とポイントをまとめます。
これさえ押さえれば、家庭でも料亭のような一杯が作れます。
- ズワイガニの味噌汁は正しい下処理が命
- 生臭さの原因は「トリメチルアミン」と「エラ」などの汚れ
- 冷凍ボイルガニは冷蔵庫でゆっくり解凍する
- 冷凍生ガニは流水や氷水で短時間解凍する
- 電子レンジや常温での解凍は厳禁
- 食べてはいけない部分は「エラ(ガニ)」と「砂袋(胃袋)」
- エラは雑菌が多く臭みの原因になるため必ず除去する
- ホンズワイガニは上品な甘み、ベニズワイガニは強い甘み
- オオズワイガニは口がM字型で見分けられる
- 小さいカニ(メス)は丸ごと煮出すと最高の出汁が出る
- 臭み取りは「冷水に5分浸す」か「湯通し」が効果的
- 酒や生姜も臭み消しに役立つ
- かにみそを入れると濃厚なコクが出る
- 味噌は火を止めてから溶き、沸騰させない
- カニの殻は捨てずに「焼いてから」煮出すと絶品出汁が取れる

