手羽元の下ごしらえをしていると、鶏肉の臭みや調理後の食感に悩むかもしれません。
手羽元は下ごしらえしないで使うと、臭みが残ったり、煮込んでもパサパサした仕上がりになったりすることがあります。
この記事では、そもそも下茹で必要かどうか、下処理で茹でる場合の手順、臭み取りに酒を使う方法など、基本を紹介します。
また、血抜きや血が出ないようにするコツ、柔らかくするために重要な切り込みの入れ方、適切な保存方法まで網羅しました。
このひと手間が、手羽元をいつもより格段においしく変えます。
- 手羽元の臭みを取る具体的な方法
- 肉を柔らかくジューシーにするコツ
- 血抜きや切り込みの正しい手順
- 下処理後の適切な保存方法と活用レシピ
料理が香る手羽元下ごしらえの基本

- 手羽元は下ごしらえしないとどうなる?
- 下茹では必要?判断のポイント
- 下処理で茹でる具体的な手順
- 臭み取りには酒が効果的か
- 血抜きと血が出ないようにするコツ
手羽元は下ごしらえしないとどうなる?
手羽元の下ごしらえをやらないと、臭いが残ったりと美味しく感じられないでしょう。
下ごしらえしないとまず、鶏肉特有の臭みが料理に残ってしまうことが挙げられます。
特に煮物やスープなど、素材の風味が直接出る料理では、この臭みが味全体に影響を与えてしまいます。
また、調理中に出てくるアクの量が多くなりがちです。
アクには臭みの元や余分な脂が含まれているため、これを取り除かないと煮汁が濁り、風味が落ちる原因となります。
さらに、骨の周りに残っている血の塊などが加熱によって固まり、料理の見た目を損ねることもあります。
このように、下ごしらえをしないことは、料理の「風味」「見た目」「食感」のすべてに影響を与える可能性があるのです。
下茹では必要?判断のポイント

手羽元の下茹で(霜降り)は、常に必要というわけではなく、作る料理によって判断するのが賢明です。
結論から言うと、煮物やスープ、特に薄味の和風だしや鶏だしを活かす料理の場合は、下茹でを強く推奨します。
なぜなら、下茹でをすることで、前述の通り、余分な脂やアク、臭みの元を効率よく取り除くことができるからです。
これにより、雑味のないクリアな味わいの煮汁に仕上がります。
一方で、唐揚げや照り焼き、スパイシーなグリルなど、濃い下味をつけたり、香味野菜を多く使ったりする料理の場合は、下茹でを省略できるケースも多いです。
これは、調味料や香辛料の風味が鶏肉の臭みをカバーしてくれるためです。
判断のポイント
- 下茹で推奨:煮物、スープ、水炊き、サムゲタン風など(澄んだ味にしたい)
- 省略可能:唐揚げ、照り焼き、カレー、スパイシーチキンなど(味が濃い)
ただし、省略可能な料理であっても、下茹でをすればよりすっきりとした上品な味わいになります。
鶏肉の鮮度があまり良くない場合も、下茹でした方が安心です。
下処理で茹でる具体的な手順

手羽元を茹でる下処理には、目的によって大きく2つの方法があります。
① 臭み取りとアク取りのための「霜降り」
これは、主に煮物やスープなど、煮汁をきれいに仕上げたい場合に行う方法です。
- 鍋にたっぷりのお湯を沸かします。
- 沸騰したお湯に手羽元を入れ、菜箸で軽く混ぜながら茹でます。
- 手羽元の表面全体が白っぽくなったら(数十秒〜1分程度)、すぐに取り出します。[3]
- 冷水(または流水)に取り、表面のアクや汚れ、残っている血の塊などを優しく洗い流します。
- ペーパータオルでしっかりと水気を拭き取ります。
② 唐揚げなどを時短・ジューシーにするための「本茹で」
唐揚げなどを作る際に、中までの火通りを確実にし、揚げる時間を短縮するための方法です。
- 鍋に手羽元と、かぶるくらいの水(またはお湯)を入れます。
- 火にかけ、沸騰したら中火にし、アクを取りながら10分〜15分ほど茹でます。
- 茹で上がったら冷水に取り、粗熱を取ります。
- 表面の汚れなどを洗い流し、ペーパータオルで水気をしっかり拭き取ります。
この方法を使うと、揚げる際は高温で衣をカリッとさせるだけで良くなるため、生焼けの心配がなく、中はしっとり仕上がります。
臭み取りには酒が効果的か

手羽元の臭み取りとして、料理酒は非常に効果的です。
理由は、料理酒に含まれるアルコール成分が、鶏肉の臭み成分(トリメチルアミンなど)と一緒に蒸発(揮発)する「共沸効果」を持つためです。
また、酒の持つマスキング効果や、有機酸による臭みの抑制効果も期待できます。
具体的な方法としては、以下のような手順があります。
酒を使った臭み取りの手順
ボウルに手羽元を入れ、料理酒(大さじ1〜2程度)と塩(少々)を振りかけ、手でしっかりともみ込みます。
しばらく(5〜10分程度)置くと、鶏肉から余分な水分(ドリップ)と臭み成分が出てきます。
出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取るか、気になる場合はさっと水で洗い流してから水気を拭き取ります。
このひと手間を加えるだけで、下味をつける前の段階で、効果的に臭みを和らげることが可能です。
血抜きと血が出ないようにするコツ

調理中に手羽元の骨の周りから出てくる赤い液体は、多くの人が「血」だと思っていますが、実はそのほとんどは「骨髄液(こつずいえき)」です。
骨髄液は血液を作るもとになる液体で、食べても健康上の問題はなく、むしろ旨味成分(コラーゲンなど)を含むとされています。
しかし、見た目が気になるという方も多いでしょう。
加熱しても赤みが残ることがあるため「生焼けかも?」と不安になりますが、骨髄液の色素(ミオグロビンなど)は熱で変色しにくい性質があるためです。
肉の中心部までしっかり加熱されていれば、赤くても問題ありません。
それでも、この赤い液体をできるだけ出ないようにしたい場合、以下の方法が有効です。
- 下茹で(霜降り・本茹で)を行う 前述の「下処理で茹でる具体的な手順」で紹介した下茹では、最も効果的な方法です
加熱によってあらかじめ骨髄液を外に出し、洗い流すことができます。 - 切り込みを入れる 骨の近くまで火が通りやすくなるよう、切り込みを入れることも有効です。
中心部まで素早く熱が伝わることで、骨髄液の流出を最小限に抑えられます。 - 血合いを取り除く 骨の周りに付着している固形の血の塊(血合い)は、臭みの原因にもなります。
下茹でや水洗いの際に、指でこすって丁寧に取り除いておきましょう。
手羽元下ごしらえで食感を極める方法

- 骨離れを良くする切り込みの入れ方
- 肉を柔らかくする下ごしらえ
- パサパサ食感を防ぐひと手間
- 下処理後の正しい保存テクニック
- 下ごしらえを活かす人気レシピ紹介
骨離れを良くする切り込みの入れ方

手羽元は骨付き肉であるため、食べにくさを感じることがあります。しかし、調理前に簡単な「切り込み」を入れるだけで、驚くほど骨離れが良くなり、食べやすさが向上します。
このひと手間には、味が染み込みやすくなる、火の通りが早くなるといった多くのメリットもあります。
基本的な切り込みの手順
最も一般的で効果的な方法は、骨に沿って切り込みを入れることです。
- 手羽元の皮が付いていない、骨が透けて見える側(肉が薄い側)を上にします。
- 骨の位置を確認し、骨に沿って包丁の刃先で1本、スーッと切り込みを入れます。
- 切り込みを入れたら、肉を手で少し開き、骨を露出させるようにします。
- (より丁寧にやる場合)骨の両側に1本ずつ、合計2本の切り込みを入れても良いでしょう。
豆知識:チューリップ型にする方法
唐揚げなどで使われる「チューリップ」の形も、切り込みの応用です。
太い方の関節の周りにある筋を包丁で切り、肉を骨から剥がすようにして先端にめくり上げると、あの形になります。
この作業だけで、煮物やローストチキンが格段に食べやすくなります。
肉を柔らかくする下ごしらえ

手羽元は比較的安価ですが、部位によっては加熱すると肉質が硬くなったり、パサついたりすることがあります。
そこで、調理前に肉を柔らかくする下ごしらえが役立ちます。
主な方法は以下の通りです。
① 物理的に繊維を壊す
最も簡単な方法は、フォークで肉全体をまんべんなく刺すことです。
これにより肉の繊維が物理的に断ち切られ、柔らかくなると同時に、下味も染み込みやすくなります。
② 酵素の力で柔らかくする
タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を含む食材に漬け込む方法です。
- 塩麹、ヨーグルト、牛乳:乳製品に含まれる酵素や酸が肉質を柔らかくします。
- 玉ねぎ、生姜、ニンニクのすりおろし:香味野菜の酵素も効果的です。
下味と臭み消しを兼ねられます。 - キウイ、パイナップル、梨のすりおろし:これらは非常に強力な酵素を持ちますが、漬け込みすぎると肉が溶けたような食感になるため、時間に注意が必要です。
③ 調理法で工夫する
煮込み料理の場合、酢や炭酸水(無糖)を少量加えて煮込むと、酸の力で肉の保水性が高まり、柔らかく仕上がると言われています。
パサパサ食感を防ぐひと手間

肉を柔らかくする下ごしらえと並行して、調理中に肉の水分(旨味)を逃がさない工夫も、パサパサ食感を防ぐ鍵となります。
ここで最も効果的なのが「ブライニング(Brining)」という手法です。
ブライニングの手順(ブライン液)
水(100ml)に対し、塩(5g)と砂糖(5g)を溶かした「ブライン液」を作ります。(水に対する塩分と糖分がそれぞれ5%の計算)
このブライン液に手羽元を30分〜1時間程度漬け込みます。
塩の浸透圧で肉に水分が入り込むと同時に、砂糖の保水効果で、加熱しても水分が逃げにくくなります。
漬け込んだ後は、ブライン液を洗い流さず、ペーパータオルで水気を拭き取ってから調理します。
このひと手間は、特にローストチキンやグリルなど、焼く調理法でパサつきやすい場合に絶大な効果を発揮します。
また、前述の「本茹で」も、加熱による水分の流出を最小限に抑え、ジューシーさを保つ有効な手段です。
下処理後の正しい保存テクニック

下処理(下茹で、切り込み、ブライニングなど)を済ませた手羽元は、そのまま調理するよりも傷みやすくなるため、適切な保存が必要です。
冷蔵保存(1〜2日以内に使用する場合)
- 下処理後、ペーパータオルで水気を徹底的に拭き取ります。これが最も重要です。
- 空気に触れないよう、1本ずつラップでぴったりと包むか、複数の場合は重ならないようにラップを敷いた保存容器に入れます。
- チルド室など、低温の場所で保存します。
冷凍保存(長期保存する場合)
- 冷蔵保存と同様に、水気を完全に拭き取ります。
- 1回に使う分量(例:4本ずつなど)に分け、重ならないように平らにしてラップで包みます。
- 冷凍用保存袋に入れ、空気をしっかり抜いて口を閉じます。
- 金属製のバットなどに乗せて冷凍庫に入れ、急速冷凍します。
下味冷凍もおすすめ
切り込みを入れた手羽元に、唐揚げ用や照り焼き用の下味調味料を揉み込み、そのまま冷凍用保存袋に入れて冷凍する「下味冷凍」も非常に便利です。
解凍と同時に味が染み込むため、調理時間を大幅に短縮できます。
下ごしらえを活かす人気レシピ紹介

丁寧な下ごしらえを施した手羽元は、様々な料理でその真価を発揮します。[4, 5]
① 王道の「甘辛煮込み」
活かせる下ごしらえ:霜降り、切り込み、柔らかくする処理(酢など)
霜降りでアクと臭みを取っているため、煮汁が濁らずクリアな仕上がりに。
切り込みから味がしっかり染み込み、酢を少量加えて煮込むことで、骨からホロリと外れる柔らかさが実現します。
② ジューシーな「唐揚げ」
活かせる下ごしらえ:本茹で、切り込み、ブライニング、臭み取り(酒)
切り込みで火通りを良くし、本茹でで中まで火を通しておけば、揚げる時間は短時間で済みます。
ブライニングで保水性を高めているため、「衣はカリッ、中は驚くほどジューシー」な唐揚げが完成します。
③ 旨味凝縮「鶏白湯(パイタン)スープ」
活かせる下ごしらえ:霜降り
最初にしっかり霜降りをして臭みとアクを取り除いてから、水、ネギの青い部分、生姜などと一緒に長時間煮込みます。
雑味のない、鶏のピュアな旨味だけが溶け出した、濃厚なスープが取れます。
完璧な手羽元下ごしらえをマスター
手羽元の「下ごしらえ」は、料理の味を格上げするために欠かせない工程です。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 手羽元の下ごしらえは料理の仕上がりを左右する
- 下処理しないと臭みやアクの原因になる
- 煮物やスープは下茹で(霜降り)を推奨
- 下処理で茹でる際は目的(霜降りか本茹でか)を明確に
- 臭み取りには酒や塩を使ったもみ洗いが効果的
- 調理中に出る赤いのは血ではなく骨髄液
- 血が出ないようにするには下茹でや切り込みが有効
- 切り込みは骨に沿って入れるのが基本
- 切り込みで火通りと味染みが格段に向上する
- 肉を柔らかくするにはフォークで刺すか酵素に漬け込む
- パサパサ食感はブライニング(塩水漬け)で防げる
- 下処理後は水気をしっかり拭き取って保存
- 冷凍保存や下味冷凍も便利
- 下ごしらえを活かしたレシピで料理がランクアップ
- ひと手間をかけて手羽元料理を楽しもう