スーパーで安価に手に入るものの、どう扱っていいか分からず購入をためらいがちな豚ハツ。
この記事では、豚ハツの下ごしらえに関するあらゆる疑問を解決します。
独特の臭みを取り除き、驚くほど美味しく食べるための具体的な方法から、豚ハツを塊やブロック、あるいはスライスで購入した際のそれぞれの処理の違い、さらには焼肉や塩焼きでの美味しい焼き方のコツまで詳しく解説します。
また、低温調理やグリルを使ったレシピ、正しい冷凍と保存方法、下ごしらえなしで使えるのかという疑問、そして豚ハツを食べることのメリットにも触れていきます。
この記事で、豚ハツ料理の全てが分かります。
- 豚ハツの臭みを完璧に取り除く下処理方法
- 塊やスライスなど形状別の扱い方の違い
- 焼肉やレシピで美味しく食べるための調理のコツ
- 鮮度を保つ正しい冷凍・保存方法
臭みをなくす!基本的な豚ハツの下ごしらえ

- まずは知りたい!豚ハツを食べるメリット
- 豚ハツの塊・ブロックのさばき方
- スライスハツの簡単な下処理方法
- 気になる臭みを完全に取り除くコツ
- 固くならない食感を保ち柔らかくする方法
まずは知りたい!豚ハツを食べるメリット
豚ハツの調理法に進む前に、まずはこの食材が持つ素晴らしい栄養価とメリットについてご紹介します。
豚ハツは、実は非常に栄養豊富な部位であり、日々の食生活に積極的に取り入れたい食材の一つです。
主な栄養素としては、高品質なタンパク質が豊富に含まれています。
タンパク質は筋肉や内臓、皮膚など、私たちの体を作る上で欠かせない基本的な栄養素です。
また、エネルギー代謝を助けるビタミンB群(特にB1、B2、B12)が多く、疲労回復効果が期待できると言われています。
さらに、女性に不足しがちな鉄分も豊富です。
鉄分は血液中のヘモグロビンを構成する重要な成分で、貧血の予防や改善に役立ちます。
レバーほどクセが強くないため、鉄分補給をしたいけれどレバーが苦手という方にもおすすめです。
豚ハツの主な健康効果
日本食品標準成分表によると、豚ハツ(心臓)100gあたりにはタンパク質が16.2g、鉄分が3.5mg含まれているとされています。(文部科学省 食品成分データベース)
カロリーは118kcalと比較的低く、脂質も7.0gと控えめなため、ダイエット中やトレーニング中の方にも最適な食材と言えるでしょう。
このように、豚ハツは低カロリー・高タンパクで、ビタミンやミネラルもバランス良く含まれているのが大きなメリットです。
クセが少なく淡白な味わいなので、ホルモン初心者の方でも食べやすい部位なのも嬉しいポイントですね。
豚ハツの塊・ブロックのさばき方
豚ハツを塊(ブロック)で購入した場合、適切な下処理を行うことで、その美味しさを最大限に引き出すことができます。
一見難しそうに見えますが、手順さえ覚えれば誰でも簡単にできます。
1. 表面を洗う
まずは豚ハツの表面を流水で優しく洗い流します。
ドリップ(肉から出る液体)や表面の汚れを取り除くことが目的です。
2. 脂肪や血管を取り除く
次に、ハツの周りについている白い脂肪の塊や、太い血管(ハツモトと呼ばれることもあります)を包丁で切り落とします。
この部分は食感が硬かったり、臭みの原因になったりすることがあります。
3. 内部の血の塊を取り除く
豚ハツは心臓なので、内部に血の塊が残っていることがあります。これが臭みの最大の原因です。
縦に半分に切り込みを入れて開き、心室や心房の中を指で探りながら、血の塊を丁寧に取り除いてください。
流水で洗い流しながら行うと、きれいに除去できます。
注意点:血の塊は隅々まで確認しましょう。
特に血管の付け根あたりに残りやすいので、念入りにチェックすることが臭みをなくす重要なポイントです。
4. 食べやすい大きさにカットする
血抜きが終わったら、調理用途に合わせてお好みの大きさにカットします。
焼肉なら5mm〜1cm程度の厚さに、煮込みなら少し大きめの角切りにするのがおすすめです。
ハツは加熱すると縮む性質があるため、思ったよりも少し厚めに切るのがコツです。
スライスハツの簡単な下処理方法

すでにスライスされている豚ハツは、塊の状態よりも手軽に下処理ができます。
しかし、スライス品でも血抜き作業は美味しさのために欠かせません。
手順は非常にシンプルです。
まず、ボウルにスライスされた豚ハツを入れ、たっぷりの水を注ぎます。
そして、手で優しく揉むように洗います。
水が赤く濁ってきたら一度水を捨て、きれいな水に入れ替えて再度洗う、という作業を2〜3回繰り返してください。
これだけでも臭みはかなり軽減されますが、さらに念入りに処理したい場合は、塩を使います。
塩を使った丁寧な血抜き方法
- ボウルに豚ハツと多めの塩(ハツ200gに対して大さじ1程度)を入れます。
- 粘り気が出るまで、指で優しく揉み込みます。塩の浸透圧で内部のドリップや臭みが外に出てきます。
- 流水で塩とぬめりをしっかりと洗い流します。
- 最後にきれいな水に5分〜10分ほど浸しておけば完了です。
調理前にはキッチンペーパーで水気をしっかりと拭き取ることを忘れないでください。
水気が残っていると、炒め物などの際に油がはねる原因になりますし、味が薄まる原因にもなります。
気になる臭みを完全に取り除くコツ
前述の通り、豚ハツの臭みの主な原因は内部に残った血の塊とドリップです。
これらをいかに効率よく取り除くかが、美味しさを左右する最大のポイントになります。
基本的な水洗いや塩揉みに加えて、さらに臭みを抑えるためのいくつかのコツをご紹介します。
酒や牛乳に漬け込む
特に臭みに敏感な方におすすめなのが、下処理の最終段階で酒や牛乳に漬け込む方法です。
水で血抜きをした後、水気を切ったハツをボウルに入れ、ひたひたになるくらいの酒または牛乳を注ぎます。
そのまま15分〜30分ほど置いておくだけで、アルコールや乳脂肪分が臭み成分を吸着・分解してくれます。
豆知識:酒は日本酒や料理酒、牛乳は低脂肪乳よりも成分無調整牛乳の方が臭み取りの効果が高いとされています。
漬け込んだ後の液体は捨て、調理前には再度水で軽く洗い流し、水気を拭き取ってください。
一晩水にさらす
時間に余裕がある場合は、たっぷりの冷水に浸して冷蔵庫で一晩置くという方法も非常に効果的です。
ゆっくりと時間をかけることで、組織の奥に残った微細な血や臭み成分が水に溶け出します。
ただし、夏場など気温が高い時期は雑菌が繁殖しやすくなるため、必ず冷蔵庫内で行ってください。
ここまで丁寧に下処理をすれば、ホルモンが苦手な方でも「これなら食べられる!」と驚くほど、クセのない味わいに仕上がりますよ。
少しの手間をかける価値は十分にあります。
固くならない食感を保ち柔らかくする方法

豚ハツの魅力は、コリコリとしながらも歯切れの良い独特の食感にあります。
しかし、加熱しすぎるとゴムのように硬くなってしまうのが難点です。
食感を損なわずに柔らかく仕上げるには、「加熱時間」が最も重要になります。
豚ハツは筋肉の繊維でできているため、火を通しすぎないことが絶対的なルールです。
炒め物や焼肉の場合、強火でさっと火を通し、表面に焼き色がついたらすぐに火から下ろすのが理想です。
中心部がほんのりピンク色くらいが最高の食べごろです。
また、調理法によっても柔らかさは変わります。
調理法 | 柔らかく仕上げるコツ |
---|---|
焼く・炒める | 強火で短時間。加熱しすぎないことが最重要。下味に油分(ごま油など)を加えておくと、コーティング効果で水分が逃げにくくなります。 |
煮る | 長時間煮込むと逆に出汁がらになって硬くなることがあります。さっと煮るか、圧力鍋などを使って一気に柔らかくするのがおすすめです。 |
揚げる | 衣をつける前に片栗粉などをまぶしておくと、旨味と水分を閉じ込めてジューシーに仕上がります。揚げ時間も短めに。 |
下処理の段階で、筋切りをしておくのも有効です。
特に塊のハツを扱う場合、硬そうな筋があれば包丁の先で数カ所切っておくと、加熱による収縮が抑えられ、食感が柔らかくなります。
用途別!豚ハツの下ごしらえを活かす調理法

- 下処理後の冷凍と正しい保存方法
- 焼肉での絶妙なハツの焼き方
- 素材の味を活かすシンプルな塩焼き
- グリルで簡単!香ばしい調理法
- 低温調理でしっとり仕上げるコツ
- 美味しく食べる豚ハツの人気レシピ
- 完璧な豚ハツの下ごしらえ総まとめ
下処理後の冷凍と正しい保存方法
下処理を済ませた豚ハツは、すぐに使わない場合、冷凍保存が可能です。
正しい方法で冷凍すれば、鮮度と食感を損なうことなく1ヶ月程度は美味しく食べられます。
冷凍保存の手順
- 下処理を済ませた豚ハツの水分を、キッチンペーパーで徹底的に拭き取ります。水分が残っていると霜の原因になり、品質が劣化します。
- 1回に使う分量ずつ小分けにし、空気が入らないようにラップでぴったりと包みます。
- ラップで包んだものを、さらに冷凍用保存袋(ジップロックなど)に入れ、袋の中の空気をできるだけ抜いてから口を閉じます。
- 金属製のバットなどに乗せて冷凍庫に入れると、急速冷凍ができるため、品質をより高く保てます。
注意点:一度解凍したものを再冷凍するのは絶対に避けてください。品質が著しく落ちるだけでなく、食中毒のリスクも高まります。
解凍方法
冷凍した豚ハツを調理する際は、冷蔵庫に移してゆっくりと自然解凍するのが最もおすすめです。
時間はかかりますが、ドリップの流出を最小限に抑え、旨味を逃しません。
急いでいる場合は、袋に入れたまま氷水に浸けて解凍する方法もあります。
電子レンジでの解凍は加熱ムラができやすく、食感を損なう原因になるため、できるだけ避けましょう。
焼肉での絶妙なハツの焼き方

焼肉店でも人気のハツ。家庭で焼肉をする際も、焼き方一つで美味しさが大きく変わります。
最大のポイントは、やはり「焼きすぎないこと」です。
ハツの魅力であるサクッとした歯切れの良さは、火を通しすぎると失われ、パサパサとした食感になってしまいます。
網や鉄板にのせたら、まずは片面に軽く焼き色をつけます。
裏返したら、焼き加減を見ながらさっと炙る程度で十分です。
最高の焼き加減の目安
表面はこんがりと焼き色がついていて、カットした断面の中心がほんのりピンク色を保っている状態がベストです。
脂がついている「アブシン」と呼ばれる部位の場合は、脂の面からじっくりと焼き始めると、脂の旨味が赤身に移り、より美味しく仕上がります。
味付けは、ハツ本来の淡白な味わいを楽しむために、塩とごま油、またはネギ塩ダレがおすすめです。
もちろん、ニンニク醤油や焼肉のタレもよく合います。
素材の味を活かすシンプルな塩焼き
豚ハツの味をダイレクトに楽しむなら、フライパンで作るシンプルな塩焼きが一番です。
下処理さえしっかりしていれば、驚くほど美味しい一品が手軽に作れます。
作り方の手順
- 下処理を済ませ、水気を拭き取った豚ハツに、塩こしょうを振ります。
お好みでおろしニンニクを少量加えても風味がアップします。 - フライパンにごま油を熱し、中火〜強火にします。
- フライパンが十分に温まったら、豚ハツを並べ入れます。
一度にたくさん入れるとフライパンの温度が下がってしまうので、少しずつ入れるのがコツです。 - 片面に焼き色がついたら裏返し、もう片面もさっと焼きます。
- 両面に焼き色がついたら火を止め、余熱で火を通すイメージで仕上げます。
焼き上がりに刻みネギを散らしたり、レモンを絞ったりすると、さらにさっぱりと美味しくいただけます。
ビールのおつまみにも、ご飯のおかずにも最適です。
グリルで簡単!香ばしい調理法

家庭用の魚焼きグリルを使っても、豚ハツを美味しく調理できます。
直火で焼くため、余分な脂が落ち、表面はカリッと香ばしく、中はジューシーに仕上がります。
下処理した豚ハツに塩こしょう、または焼肉のタレなどで下味をつけ、グリルの網に並べます。
この時、アルミホイルを敷くと後片付けが楽になります。
中火で5〜7分程度、様子を見ながら加熱してください。
焦げ付きやすいので、特にタレ焼きの場合は火加減に注意が必要です。
応用編:豚ハツと長ネギを交互に竹串に刺して、グリルで焼けば自家製の「ハツ串」が楽しめます。
七味唐辛子や山椒を振って食べるのがおすすめです。
低温調理でしっとり仕上げるコツ
近年人気が高まっている低温調理は、豚ハツとも相性抜群です。
低温でじっくりと火を通すことで、タンパク質の急激な変性を防ぎ、驚くほどしっとり、ぷりぷりとした食感に仕上げることができます。
まず、下処理を済ませた豚ハツを、お好みの調味料(塩、こしょう、ハーブ、ニンニク、ごま油など)と一緒に耐熱性の高いフリーザーバッグに入れ、空気をしっかりと抜いて真空状態にします。
次に、低温調理器をセットした鍋に入れ、加熱します。ここで重要になるのが温度と時間です。
安全な低温調理のための温度管理
食中毒のリスクを避けるため、厚生労働省は豚肉の加熱殺菌基準として「中心部の温度を63℃で30分間以上加熱」することを推奨しています。
豚の食肉の基準に関するQ&Aについて – 厚生労働省
この基準を満たすため、低温調理器の設定温度は63℃、加熱時間は肉の厚さにもよりますが最低でも1時間〜2時間は見ておくと安心です。
自己流の温度管理は危険ですので、必ず専用の調理器具を使用してください。
加熱が終わったら、袋ごと氷水に入れて急速に冷却します。
これにより、余熱で火が通り過ぎるのを防ぎ、食中毒菌の増殖も抑制できます。
冷えたら薄くスライスし、ネギ塩ダレやポン酢でいただくのがおすすめです。
まるで肉刺しのような、新しいハツの美味しさを発見できます。
美味しく食べる豚ハツの人気レシピ

豚ハツは焼くだけでなく、様々な料理に活用できる万能食材です。
ここでは、定番から少し変わったものまで、人気のレシピをいくつかご紹介します。
1. 豚ハツとニラのスタミナ炒め
豚ハツ、ニラ、もやしをごま油で炒め、醤油、オイスターソース、おろしニンニクで味付けする定番の炒め物です。
シャキシャキの野菜とコリコリのハツの食感が楽しく、ご飯が進むこと間違いなしの一品です。
2. 豚ハツの唐揚げ
下処理した豚ハツに、醤油、酒、おろし生姜、おろしニンニクで下味をつけ、片栗粉をまぶしてカラリと揚げます。
外はサクサク、中はジューシーで、おつまみにぴったり。冷めても美味しくいただけます。
3. 豚ハツの生姜煮
甘辛い味付けで煮込むのもおすすめです。
スライスした生姜と一緒に、醤油、みりん、酒、砂糖で煮詰めます。
こんにゃくやごぼうなどを加えても美味しく仕上がります。
日持ちもするので、常備菜としても便利です。
他にも、アヒージョの具材にしたり、細かく刻んでカレーやチャーハンの具にしたりと、アイデア次第でレシピは無限に広がります。
ぜひ色々な料理に挑戦してみてくださいね。
完璧な豚ハツの下ごしらえ総まとめ
豚ハツを最高に美味しく食べるための下ごしらえと調理のポイントをまとめます。
- 豚ハツは低カロリー・高タンパクで栄養豊富な食材
- 臭みの主な原因は内部の血の塊とドリップ
- 塊のハツは縦に開いて内部の血を丁寧に取り除く
- スライスハツは塩揉み洗いが効果的
- 臭みが苦手なら酒や牛乳に漬け込むと良い
- 加熱すると縮むため少し厚めにカットするのがコツ
- 美味しさの秘訣は加熱しすぎないこと
- 焼肉では中心がほんのりピンク色がベストタイミング
- 低温調理なら63℃で1時間以上が安全で美味しく仕上がる目安
- 下処理後は水気を拭き取ってから冷凍保存が可能