秋の味覚として人気のキノコ、ショウゲンジ。しかし、いざ手に入れても「どうやって下ごしらえすればいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ショウゲンジの下ごしらえについて、基本的な洗い方から適切な保存方法、さらには美味しい調理方法やきのこレシピまで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ショウゲンジの旬の時期や栄養、他の呼び名であるコムソウの由来、そして安全に楽しむための見分け方や似た毒キノコに関する注意点も網羅しています。
この記事を読めば、ショウゲンジを余すことなく、そして安全に美味しく楽しむための知識がすべて身につきます。
- ショウゲンジの基本的な特徴と見分け方
- 虫や汚れを落とす正しい下ごしらえの手順
- 美味しさを長持ちさせる冷蔵・冷凍保存のコツ
- ショウゲンジの魅力を引き出すおすすめの調理法
ショウゲンジの下ごしらえ前に知るべき基本情報

- ショウゲンジの旬はいつ?
- 他の呼び名コムソウの由来とは
- 初心者でも可能な見分け方
- 似た毒キノコとの違いに注意
- 基本となるショウゲンジの洗い方
ショウゲンジの旬はいつ?
ショウゲンジの旬は、主に夏の終わりから秋にかけてです。
特に気候が涼しくなり、山々が色づき始める9月末から11月初旬頃に最も多く発生します。
この時期が、キノコ狩りのベストシーズンと言えるでしょう。
発生する場所は、アカマツやコメツガといった針葉樹林が中心ですが、コナラなどの広葉樹が混じる林の地上でも見つけることができます。
一度にまとまって群生することも多く、時には菌輪(フェアリーリング)を作ることもあるため、一つ見つけると周辺でたくさん収穫できる可能性があります。
豆知識:ショウゲンジの名前の由来
ショウゲンジ(正源寺または性賢寺)という名前は、お寺の名前に由来するという説があります。
一説には、江戸時代の書物「菌譜」に「性賢寺の僧が初めて食べ、食用になることを広めた」と記されていることから、この名がついたと言われています。
他の呼び名コムソウの由来とは

ショウゲンジには、「コムソウ(虚無僧)」というユニークな地方名があります。
これは、幼菌(若いキノコ)の姿が、深い編み笠をかぶって尺八を吹く虚無僧の姿にそっくりなことに由来します。
丸い傘とずっしりした柄のバランスが、まさに虚無僧の立ち姿を彷彿とさせるのです。
山の中で生えている若いショウゲンジの姿は凛としていて、この呼び名にも納得ができます。
ただし、成長して傘が開いてくると、その面影は薄れてしまいます。
コムソウの他にも、地域によっては「ボウズタケ」や、薦(こも)を被ったように見えることから「コモッカブリ」といった様々な呼び名で親しまれています。
昔から人々の身近なキノコであったことがうかがえますね。
このように、他の呼び名を知っておくと、キノコ狩りでの発見がさらに楽しくなるかもしれません。
初心者でも可能な見分け方
ショウゲンジは比較的特徴がはっきりしており、ポイントさえ押さえれば初心者でも見分けやすいキノコです。
安全にキノコ狩りを楽しむために、以下の特徴をしっかりと覚えましょう。
傘の特徴
傘の直径は4cmから15cmほどで、色は黄色から黄土色をしています。
表面には放射状の細かいシワがあるのが大きな特徴です。
幼い時期は丸い球形や饅頭のような形をしていますが、成長するにつれて徐々に平らに開いていきます。
柄(軸)の特徴
柄は白っぽい色で、根元に向かって少し太くなる、ずっしりとした形をしています。
そして、最も重要な見分けのポイントが柄の中ほどにある「ツバ」です。
このツバは膜質で、成長の過程で取れやすいですが、その痕跡が残っていることが多いです。
その他の特徴
ヒダは最初は白っぽいですが、成熟するとサビ色に変わっていきます。
肉は白色で、味や匂いに特にクセはありません。
部位 | 特徴 |
---|---|
傘 | 黄土色で放射状のシワがある。幼菌は球形。 |
柄 | 白っぽく、ずっしりしている。中ほどに膜質のツバ(またはその痕跡)がある。 |
ヒダ | 最初は白っぽく、後にサビ色に変化する。 |
発生場所 | アカマツなどの針葉樹林や広葉樹林の地上。 |
これらの特徴を総合的に判断することが、正確な同定につながります。
似た毒キノコとの違いに注意

ショウゲンジは食用として人気ですが、よく似た毒キノコも存在するため、注意が必要です。
特に初心者は、確実に確定できないキノコは絶対に「採らない」「食べない」「人にあげない」ことを徹底してください。
ドクベニタケ(毒)
通常は鮮やかな赤色をしていますが、雨に打たれて色が抜けると、ショウゲンジのような黄色っぽい見た目になることがあります。
しかし、ドクベニタケの柄やヒダは真っ白で、ショウゲンジの最大の特徴である「ツバ」がありません。
この点を注意深く観察すれば見分けることが可能です。
クリフウセンタケ(食)
同じフウセンタケ科のキノコで、食用ですがショウゲンジと似ています。
ショウゲンジよりも全体的に華奢な印象で、傘の色は茶色が強い傾向があります。
こちらも柄にショウゲンジのようなはっきりしたツバはありません。
【最重要】テングタケ科のキノコとの誤認に注意
猛毒を持つテングタケ科のキノコの中には、ショウゲンジと特徴が似ているものもあります。
キノコの同定は一つの特徴だけで判断せず、傘、柄、ヒダ、ツバの有無など、複数の特徴を総合的に見て判断することが極めて重要です。
少しでも迷ったり、自信がなかったりする場合は、専門家や地域のキノコに詳しい方に必ず確認してもらいましょう。
基本となるショウゲンジの洗い方

山から採ってきたショウゲンジを美味しく食べるためには、丁寧な下ごしらえが欠かせません。
土やゴミ、そして中にいるかもしれない虫をしっかり取り除くことがポイントです。
1. ゴミや土の除去
まず、水で洗う前に、傘や柄についた落ち葉、土などの大きなゴミを手で丁寧に取り除きます。
石づき(根元の硬い部分)は、包丁で切り落とすか、爪でこそげ取るようにしてきれいにしましょう。
キノコは水を吸いやすいため、先に乾いた状態でゴミを取り除くのがコツです。
2. 虫抜きの処理(必要な場合)
特に夏場に採れたショウゲンジには、中に虫がいることがあります。
その場合は、以下のいずれかの方法で虫抜きを行います。
- 塩水に漬ける:ボウルに水と塩(小さじ2~3杯程度)を入れてよく混ぜ、食べやすい大きさに裂いたショウゲンジを30分ほど浮かべます。
キノコは浮き、虫は塩水の中に沈むため、効率的に虫を取り除くことができます。 - さっと茹でる:沸騰したお湯にキノコを入れ、すぐに取り出して冷水で洗う方法も有効です。
ただし、この方法はキノコの風味が少し抜けてしまう可能性があります。
虫抜きの後、流水でさっと洗い流して汚れを完全に落とします。
長時間水に漬けると風味が落ちるため、手早く行うことが大切です。
3. アク抜き
ショウゲンジは茹でると、白い泡状のアクが出続けることがあります。
調理の際は、このアクを丁寧に取り除くことで、雑味がなくなり、より美味しく仕上がります。
美味しいショウゲンジの下ごしらえと調理・保存

- おすすめしたいショウゲンジの調理方法
- 大量消費に最適なきのこレシピ
- ショウゲンジの栄養と効能
- 長持ちさせるための正しい保存方法
- ショウゲンジの下ごしらえのポイントまとめ
おすすめしたいショウゲンジの調理方法
ショウゲンジは味や香りにクセがなく、シャキシャキとした歯切れの良い食感が特徴です。
そのため、どんな料理にも合わせやすい万能キノコと言えます。
味はやや淡白で大味な傾向があるため、醤油やバター、だしを使った少し濃い目の味付けと相性が抜群です。
ここでは、ショウゲンジの魅力を引き出すおすすめの調理方法をいくつか紹介します。
- すき焼き・鍋物:味が染みこみやすく、食感も良いため、すき焼きや鍋の具材に最適です。ショウゲンジから出る出汁が、鍋全体の旨味を一層引き立てます。
- 煮物・佃煮:麺つゆや醤油、みりんでじっくり煮込むと、ご飯のお供にぴったりの一品になります。
- 炒め物:バター醤油炒めや、他の野菜との炒め物にもよく合います。歯切れの良さが楽しめます。
- 汁物:きのこ汁や味噌汁に入れると、良い出汁が出て美味しくいただけます。
- 炊き込みご飯:秋の味覚を存分に味わえる定番料理です。キノコの旨味がご飯一粒一粒に染み渡ります。
- マリネ:さっと茹でたショウゲンジを、オリーブオイルやレモン汁、ビネガーで和えれば、洋風の前菜になります。日持ちもするので作り置きにも便利です。
天ぷらやパスタの具材にするのもおすすめです。
クセがないからこそ、和洋中どんな料理にもアレンジ自在なのがショウゲンジの素晴らしいところですね。
大量消費に最適なきのこレシピ

キノコ狩りでショウゲンジがたくさん採れた時には、大量消費できるレシピが役立ちます。
ここでは、手軽に作れて美味しいレシピを2つご紹介します。
ショウゲンジの卵とじ丼
甘辛い味付けが食欲をそそる、簡単な丼ものです。
- 下ごしらえしたショウゲンジと薄切りにした玉ねぎを、だし汁、醤油、みりん、砂糖で煮ます。
- ショウゲンジに味が染みたら、溶き卵を回し入れ、蓋をして半熟状になるまで火を通します。
- 温かいご飯の上にのせれば完成です。
ショウゲンジのプルプルとした食感と、とろりとした卵が絶妙にマッチします。
ショウゲンジと鶏肉のクリーム煮
和風のイメージが強いショウゲンジですが、クリーム系との相性も抜群です。
- 食べやすい大きさに切った鶏肉とショウゲンジをバターで炒めます。
- 鶏肉に火が通ったら小麦粉を振り入れて軽く炒め、牛乳または生クリームを少しずつ加えて混ぜ合わせます。
- コンソメで味を調え、とろみがつくまで弱火で煮込めば出来上がりです。
ショウゲンジは煮込むことで旨味が出るので、じっくり火を通すのが美味しく作るコツです。
パスタソースとしてアレンジするのも良いでしょう。
長持ちさせるための正しい保存方法

ショウゲンジは水分が多く、傷みやすいキノコです。
そのため、収穫したり購入したりしたら、できるだけ早く下ごしらえをして調理するのが基本です。
しかし、一度に食べきれない場合は、適切な方法で保存することで美味しさを長持ちさせることができます。
冷蔵保存(短期保存)
2~3日中に食べる場合は、冷蔵保存が可能です。
キッチンペーパーや新聞紙でショウゲンジを包み、穴を開けたポリ袋や紙袋に入れて野菜室で保存します。
ポイントは、キノコが呼吸できるようにし、水滴がついて傷むのを防ぐことです。
冷凍保存(長期保存)
長期保存したい場合は、冷凍が最もおすすめです。
冷凍することで細胞壁が壊れ、調理した際に旨味が出やすくなるというメリットもあります。保存方法はいくつかあります。
- 茹でてから冷凍:下ごしらえをしてさっと茹で、水気をしっかり切ってから冷まし、保存袋に入れて冷凍します。使うときは凍ったまま調理できて便利です。
- 水煮にして汁ごと冷凍:だし汁やコンソメスープで煮て、アクを取りながら火を通します。
冷めたら一回分ずつ汁ごと保存袋に入れて冷凍します。
キノコの出汁が溶け出した汁も一緒に使えるため、風味を損なわず非常に美味しくいただけます。 - オイル漬けで冷凍:刻んだニンニクやハーブと一緒にオリーブオイルで軽く煮て、冷ましてから冷凍する方法もあります。
冷凍保存の期間の目安は約1ヶ月です。この期間内に使い切るようにしましょう。
ショウゲンジの下ごしらえのポイントまとめ
ショウゲンジの下ごしらえから保存、調理法までのポイントをまとめます。
- ショウゲンジの旬は秋で特に9月末から11月初旬
- アカマツなどの針葉樹林や広葉樹林の地上に発生する
- 幼菌の姿からコムソウという地方名で呼ばれる
- 見分け方のポイントは傘のシワと柄のツバ
- ドクベニタケなど似た毒キノコには十分注意する
- 下ごしらえはまず乾いた状態で土やゴミを落とす
- 虫が気になる場合は塩水に30分ほど漬けて虫抜きする
- 調理の際は茹でた時に出る白いアクを丁寧に取り除く
- 味にクセがなく歯切れが良いのが特徴
- すき焼きや煮物など濃い目の味付けと相性が良い
- 傷みやすいため入手後は早めに調理するのが基本
- 長期保存する場合は冷凍が最もおすすめ
- 茹でてから、または水煮にして汁ごと冷凍すると便利
- 冷凍保存の目安は約1ヶ月
- 食物繊維などの栄養を含むとされている